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レンズが無くても撮影出来る。しかも撮影後に合焦位置を変えられる。しかも動画撮影可能。 [テクノロジー]

日立製作所のニュース リリースによりますと、レンズが無くても動画などが撮影可能な上、撮影後に合焦位置を調整する事も出来るレンズレス カメラの技術を開発したそうです。

"日立製作所" のニュースリリース "動画撮影後に容易にピント調整ができるレンズレスカメラ技術を開発" のURL:
http://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2016/11/1115.html

かつて、写真や動画を撮影する為のカメラは銀塩フィルムを用いたアナログ カメラでしたが、現在はCMOSまたはCCDの半導体集積回路の撮像素子を使用したディジタル カメラが主流となっております。
そしてディジタル カメラはレンズも撮像素子も小型で高性能なものが開発され、スマート フォンのように10mm未満の厚みの筐体に内蔵されたカメラでさえ4k動画像が撮影出来るようになりました。

しかしながら、そうしたカメラ モジュールであってもやはりレンズは必要でした。
レンズには凸レンズにしても凹レンズにしてもある程度の厚みがあり、また、レンズと撮像素子の間には光線を絞り込む為の空間が必要でした。

更に、より高性能なカメラのレンズは大口径であり、鏡胴に組み込まれるレンズの枚数も10枚を超え、中には20枚以上のレンズを組み合わせて1つの鏡胴に組み込んだ高級製品もあります。
こうしたレンズの鏡胴は大きく、長く、非常に重たいものです。

近年、微細加工技術、特に半導体集積回路の開発などで培われたナノテクノロジーを駆使して極微細な構造を造形し、光に対する屈折などの振る舞い方を操作したメタ表面(メタサーフェス / meta-surface)、メタ材料(メタマテリアル / meta-material)、または回折現象を利用した回折レンズ、古くは同心円状にレンズを輪切りにしてその表面部分だけを敷き詰めた様な構造のフレネル レンズなど、レンズを極薄にする事が可能な技術が開発されております。
現在も既に高級なカメラ用レンズには回折レンズが部分的に組み込まれるようになっております。
回折レンズは屈折レンズに対して、波長分散に於ける色の順番が逆となる性質があり、通常の屈折レンズと回折レンズを組み合わせる事で、色収差を効果的に打ち消す事が可能です。
これは異常分散ガラス(ED レンズ / extraordinary low dispersion lens)を組み合わせる場合と同様の仕組みです。

Canonからは積層型回折光学素子を用いたレンズが発売されております。
これは回折格子を積層化することにより、高次の回折光の画質への悪影響を無くしたものだそうです。
"ASCII.jp" の記事 "キヤノン、撮影レンズ用の積層型回折光学素子を開発" のURL:
http://ascii.jp/elem/000/000/316/316766/

NikonからはPF レンズ(位相フレネル レンズ)という呼称で回折素子を通常の屈折レンズの裏面に接合した構造のレンズ製品が販売されております。
"デジカメ Watch Watch" の "AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR" に関する記事のURL:
http://dc.watch.impress.co.jp/docs/news/interview_dcm/692481.html

ですが、回折レンズなどを用いたとしても、高次の回折光の画質への悪影響を減らす為には製造費用が嵩みますし、やはり撮像素子との間には充分な空間が必要となります。

ところで余談ですが、レンズの役割というのは、多くの光を集めて光量を増やす事と、被写体から発せられた光線を撮像素子表面上に結像させる事です。
また、レンズの口径が小さいほど、その波長に於ける解像度が低下するのは回折現象が原因です。
光は光子という素粒子であり、尚且つ、電磁波と言われるように波としての性質があります。
回折現象によって光の波長に対して通り道の幅、詰まりレンズの口径が小さいほど、光子はレンズを抜けた後で大きく広がり、撮像素子上への到達範囲が広がってしまい、像が暈けてしまうのです。


今回日立製作所が開発したレンズレス カメラ技術では、レンズではなく、同心円パターンを印刷したフィルムを使用するそうです。
それを撮像素子の前面に僅かな隙間を設けて配置し、様々な方向から到来する光線を同時に記録。
同心円パターンによって生じる影に、光の情報の記録後に行う計算処理の中で同じ同心円パターンを倍率を調整して重ね合わせることでモアレを生じさせるそうです。

モアレは2つの空間周波数の干渉による唸りです。
このモアレの像をフーリエ変換して処理を施すことで元の撮影対象の画像を復元出来るそうです。
フーリエ変換を行うと画像を周波数領域表現に変えられます。
それにより特定の周期を持つパターンを除去するなどと言った事が可能です。
画像処理では一般的にフーリエ変換が多用されます。

今回日立製作所が開発したレンズレス カメラ技術では、ただレンズ無しでディジタル画像が撮影出来るだけではありません。
撮影したディジタル データには様々な方向から到来する光線が画素内に重ね合わされて記録されている訳ですから、画像処理内でモアレを作り出す際に使用する同心円パターンの倍率を微妙に変化させて調整することにより、選択的に特定の距離にある物体表面から到来した光線とフィルム上の同心円パターンとによって生じた影と、画像処理内で生成した同心円パターンとの干渉縞を作ることが出来ます。これにより撮影後に合焦位置を変えられる訳です。

この技術では何と、一般的なノートブック PCで30[fps]の動画像を撮影、処理出来るとの事です。
これにより、超薄型の動画撮影可能なカメラが出来、3次元的な情報も得られるでしょうから、ロボットや自動運転自動車に搭載する事で製造費用の削減や設計自由度の向上などに繋がって行く事が期待出来そうです。


オンライン百科事典 "Wikipedia" の "レンズ" についてのページのURL:
https://ja.wikipedia.org/wiki/レンズ

"Wikipedia" の "フーリエ変換" についてのページのURL:
https://ja.wikipedia.org/wiki/フーリエ変換

"Wikipedia" の "モアレ" についてのページのURL:
https://ja.wikipedia.org/wiki/モアレ

"Wikipedia" の "回折" についてのページのURL:
https://ja.wikipedia.org/wiki/回折

尚、私はこのニュースリリースをガジェット&テクノロジー サイトである、GIZMODO ジャパンで知りました。
"ギズモード ジャパン" のウェブサイトのURL:
http://www.gizmodo.jp/

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